去年の夏


臥竜橋の上で はじめて


おはんに 会うてから この幾月


大名小路と鍛冶屋街と 二つの家を


行きつ 戻りつ してたよに


今日からは川西の奥に


新しうに また一つ


家がでけたのゃ と


何食はぬ気で


ゐてたので ござります


宇野千代


碑文は昭和六十年一月


八十七才の千代の自筆による小説「おはん」の一説である


昭和六十年四月
(石碑文より)

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